過蓋咬合とはディープバイトとも呼ばれ、歯を閉じたときに前歯が深く咬み合い、上の歯で下の歯を覆ってしまう状態を指します。
上顎の歯茎が笑ったときに見えたり、上顎の内側の歯肉を下顎の前歯で傷つけて炎症を起こす危険性があります。
上顎と下顎のバランスが悪く、上顎が大きく発達していたり、下顎の発達が未熟の場合、過蓋咬合になりやすくなります。この場合は、先天性による影響が大きく、両親のどちらかが過蓋咬合であることが多いです。
乳歯が早い段階で抜けってしまった場合、過蓋咬合になりやすくなります。
歯が抜けると、両隣の歯は隙間を埋めるために中央に寄り、対の歯は長く伸びてきます。そのため、乳歯の抜け方によっては過蓋咬合を引き起こすことがあります。
乳歯から永久歯に生え変わる際は、一度に全ての歯が入れ替わるのではなく、部分的・段階的に入れ替わっていきます。この過程で、上下の乳歯が抜けるバランスが悪いと、過蓋咬合になりやすくなります。
過蓋咬合は、上下の歯が深く噛み合っているため、歯と歯が擦れ合って摩耗してしまいます。歯のエナメル質はとても硬い組織で構成されていますが、長い間摩耗を繰り返すと歯が痩せてしまいます。
また、被せ物・ブリッジ・入れ歯などがある場合は取れやすくなります。
過蓋咬合の人は、多くの場合老け込んで見えてしまいます。その理由は、噛み合わせが深くなるため、高齢者のように鼻から下の顔の長さが短く見えるため、相手に老けた印象を与えてしまうためです。
過蓋咬合は、上の歯が下の歯に大きく覆いかぶさっているため、この状態が長く続くと前歯が前方に傾いてしまうことがあります。そうなると、過蓋咬合だけでなく、出っ歯や顎関節症を併発してしまいます。
一度出っ歯の状態をつくり、それから過蓋咬合を治療する
過蓋咬合の治療は、まず下の前歯が見えるようにするため、一旦上の前歯を前方に傾斜させ、一時的に出っ歯の状態にします。
その後、過蓋咬合より先に、この出っ歯を治す治療を行います。上の歯と下の歯の治療に必要な期間は異なり、同時にスタートすると治療の進行状況に差違が生じるため、下の歯に矯正装置をつけるタイミングが他の矯正治療と比べて遅いのが特徴です。そのため、出っ歯の治療を開始してから、時期をみて下の歯にも矯正装置を装着します。
期間は1年程度で、その後最終的な微調整を半年程度行い、過蓋咬合の治療は終了となります。したがって、トータルで2年程の治療期間になります。
治療後は保定装置を装着し、歯が元の位置に戻ろうとするのを防ぎます。